35歳無職6年、24歳彼女と同棲してます

ブログ名にある通りですが、楽しいことつらいことあります。たくましく生きていきます。千葉県松戸市在住。

生涯で忘れられない人、嵯峨根さん

新卒で入社した会社で

私は大学を卒業後、新卒で某不動産賃貸の会社に入社した。

その会社は全国にいくつもの店舗を持っている。

私は面接のときに自宅から一番近いX店への配属を希望した。それが考慮されてか、入社後、すんなりと希望通りのX店に配属された。

入社式が終わった後、X店に向かおうとすると、X店のあるエリアの部長が

「し太郎君、X店にはね「嵯峨根」っていう面白い男がいるよ。楽しみにしておきな」

と言った。嵯峨根さんか、どういう人なんだろう。と社会人になったばかりの私は心を弾ませたのを覚えている。

嵯峨根さんとのファーストコンタクト

X店に配属されたのは私だけではなかった。私の他に女性一人もいた。同期である。

その同期と一緒にX店に行く。到着すると、店内には男性3人と女性が1人いた。

この男性3人の中の一人が嵯峨根さんなのだろう。その男性陣をじっと観察していると、一人の背の高い男性が近づいてきて

「はじめまして、嵯峨根と言います。30歳独身で彼女募集中です」

と挨拶した。

その時にあることに気が付いた。

なんか雑巾の臭いがする。

嵯峨根という人物

同期の女性がすかさず私に耳打ちする。

「ねえ、あの人臭くない?あの人が嵯峨根さんなの?」

すると男性陣の中のもう一人の人、X店の店長がこちらを向いた。どうやらこの同期の言ったことが聞こえていたらしい。すると店長は

「おい!嵯峨根!お前今週風呂入ったのか?」

と嵯峨根さんに大声で尋ねた。すると

「いやー、今週はまだ入れてないですね」

とニヤニヤしながら嵯峨根さんは言う。

「何が今週は、だ。お前先週も入ってないだろ」

と店長が言うと、相変わらず嵯峨根さんはニヤニヤしている。

この人、ヤバい。

すると店長は自分のデスクにつかつかと行き、ファブリーズを持ってきて嵯峨根さんに直接かけはじめた。

「こいつ、水虫でワキガだからさ、臭いと思ったらファブリーズしてやって」

と店長は言う。ファブリーズをかけられながら、嵯峨根さんは

「やめてくださいよー」

と相変わらずニヤニヤしている。

二人ともヤバい。

嵯峨根さんのやったこと

その日は私たち新入社員のために歓迎会が開かれた。そこでお酒を飲んで喋りが止まらなくなった店長は私たちに嵯峨根さんについて面白いことを教えてやると言った。

嵯峨根さんという人は

・つまらない嘘をついて、同僚や店長、客を欺くことは朝飯前。

・先月、営業車でおばあちゃんを轢いた。

200万の借金があり、店長が連帯保証人になっている。店舗に怪しい消費者金融から電話が毎日かかってくる。毎月の返済は給料から天引きされ、30歳主任でありながら、手取り額は新卒を下回っている。

・店長に借金の保証人になってもらったために、店長に逆らえず、奴隷のような扱いを受けている。(何回も殴られたり蹴られたりしているのを見たことがある)

・毎日「店長のお言葉」という説教を2時間以上受けている。

・店長の命令により、かれこれ6か月以上連続勤務している。朝3時半まで残業している。

・店長の命令により、殺人事件があった部屋に住んでいる。そのため、近所の人は挨拶してくれない。

「嵯峨根はすごいよ、本当に」

と店長は言った。

あれから2年後、嵯峨根さん消える・・・

ある日いきなり嵯峨根さんが出社してこなくなった。嵯峨根さんの携帯に電話しても出ず、殺人事件のあった嵯峨根さんの家に行っても人の気配がしない。かといって引っ越している様子もなかった。

無断欠勤がしばらく続き、相変わらず家に帰ってないことが分かったことで、さすがにX店のスタッフ全員が心配になり、嵯峨根さんの実家に連絡したところ、まったく心当たりがないとのことだった。そしてその翌日、嵯峨根さんの捜索願を警察に出すために、嵯峨根さんの両親と妹が上京してきた。

嵯峨根さんの両親が警察と話した後に店長と話していた。

昼食時に店長に

「嵯峨根さんのご両親と何話してたんですか?」

と聞くと

「俺、嵯峨根の借金の連帯保証人になってたじゃん?あいつ本当に行方不明になったら俺があいつの借金200万円払わなくちゃいけないから、嵯峨根の両親に代わりに払ってもらおうかと思って頼んでた。結果、ご両親が200万払ってくれるってさ。安心したよ」

と店長は言った。そうだった。店長は保証人になっていたんだ。

そして、そのまま捜索願は出され、嵯峨根さんは無断欠勤を理由にクビになった。

そして10年後、嵯峨根さんと再会

33歳になったある日、私は新宿で友人と食事の約束をしていた。

時間よりも早めに着いたので、待ち合わせ場所の新宿駅南口になんとなく立っていると、少し先にホームレスと思われる人に声をかけている男性がいることに気づいた。何人ものホームレスに声をかけて何か喋っている。何をしているんだろうか、と思ったよりも早く気付いた。

そのホームレスに声をかけている男性は嵯峨根さんだったのだ。

私はすぐに走って嵯峨根さんのそばに行って

「嵯峨根さん!お久しぶりです.!X店でお世話になったなんとかし太郎です。覚えてますか?」

と聞くと

「お?おおー、久しぶり、驚いたよ」

と素直にびっくりしているようだった。

「一体、何しているんですか?」

と聞くと

「今ちょっと人を用意しなくちゃいけなくて・・・」

と言ったので私はなんだか怖くなった。

その場を離れようとすると、

「あの時、俺、生きてて意味あるのかな?って思ったんだよね」

と嵯峨根さんは言った。

「わからなくなって、逃げちゃったけど、そして皆に迷惑かけちゃったけど」

と付け加えた。

行方不明になった嵯峨根さんは10年後、生きていた。

ご両親に連絡したのだろうか。

さらにあれから2年たった。今何をしているのだろうか。